眼の腫瘍

犬猫ともに眼にも腫瘍が発生します。

眼にできものがある、眼球の色が変わってきた、視覚が弱くなってきた、眼から出血している、などの症状を呈することが多いです。
腫瘍が疑わしいのか、それ以外の疾患が疑わしいのかを見極めながら眼と全身の検査を行います。

 

当院で治療を行った子の経過をご紹介いたします。
(手術画像もあるため、苦手な方は注意してください)

このネコちゃんは11歳の雌で、数ヶ月前から右眼が大きく腫れてきたのと、その眼から出血しているとのことでした。病院へ行く手段がないとのことで、往診にて預かり病院で治療することになりました。

外貌から右眼が異常に腫大してるのは明らかで、全身の検査および、鎮静化で針吸引細胞診検査および超音波検査を行ったところ、眼球の悪性腫瘍が疑われました。
腹部超音波検査で肝臓にもしこりが見つかり眼の病変との関連性(転移)も示唆されましたが、ご相談の上、眼の治療を最優先に行うことになりました。
右眼の視覚はなく出血も続いているため、できものの精査とQOL(生活の質)の改善を目的に右眼球の摘出を行いました。

 

手術前所見

右眼の黒いできものが大きく腫れ上がっています。

①.png

 

手術所見


左は眼球を摘出している途中の写真です。
右の写真は眼球とできものをまとめて摘出した後の写真です。

②.png

 

病理組織検査の結果、眼の病変は悪性腫瘍の「眼球悪性黒色腫(眼球メラノーマ)」であることが判明しました。メラノーマはメラニン産生細胞に由来し、猫の眼球に発生する悪性腫瘍としては最も多く、高確率で肺や肝臓に転移します。
肝臓にできたしこりも針細胞診検査でメラノーマの転移ということが判明しました。

眼の腫瘍が摘出でき、ネコちゃんの生活の質も格段に上がりましたし、出血の問題が解決され、飼い主様にも安心した生活が戻りました。
今回飼い主様はこれ以上の治療を望まなかったため、ご自宅で経過を見ていくことになりました。
ちなみに、積極的な治療を行うとすれば、抗がん剤などを用いた全身治療を検討します(転移が成立しているため全身治療となります)。