犬の脾臓腫瘍

●はじめに

脾臓の腫瘍は犬で比較的多く発生します。
脾臓は左腎臓のやや外側に位置し、免疫系、血球の処理、造血などの役割を持ちます。その脾臓に塊状、蜂の巣状に腫瘍が形成されることがあります。
ただし、外見からではなかなか分かりにくいため、健診や他の検査の時に偶然発見される場合が多いです。
もしくは、脾臓の腫瘍から出血し(血腹)、本人の状態が悪くなってはじめて発見されることもしばしばあります。

 

●診断

脾臓にしこりができているなどの異常が見つかった場合、そのしこりの正体が腫瘍なのかそれ以外なのかは、画像検査(レントゲン、超音波検査)では判定ができません。
針吸引細胞診検査で判定が可能な腫瘍も中にはありますが(リンパ腫、肥満細胞腫など)、もともと脾臓自体にリンパ球や肥満細胞が存在し、形態も多様なため、腫瘍かどうかの判断が難しい場合があります。そのため、外科的に脾臓を摘出して病理組織診断を行うことによって正確な診断を得ることができます。
また脾臓を摘出してもその役割を他の臓器が担えるため、ほとんど問題になりません。
外科的に切除をすることにより、脾臓の診断と、今後起きる危険性があるしこりからの出血を事前に防ぐことができます。
ちなみに、しこり自体が腫瘍以外のものであっても、大きくなった場合に破裂して出血する場合もありますし、腫瘍だからといって必ず出血するということもありません。

 

●悪性腫瘍

脾臓の悪性腫瘍で最も多いものは「血管肉腫」と呼ばれるものです。
血管肉腫は局所浸潤性と遠隔転移性が極めて高い悪性腫瘍で、肝臓や肺に高確率に転移します。
外科的な脾臓摘出を行うことで腫瘍による多臓器への圧迫や、腫瘍からの出血は防ぐことができますが、その後の生存期間は約2ヶ月と非常に厳しいものがあります。
外科治療後に化学療法(抗がん剤)を併用することで、遠隔転移の遅延が期待できますが、それでも外科治療後の1年生存率は約10%、2年生存率は約5%であり、根治が困難ながんといえます(腫瘍が破裂していた場合はさらに厳しい)。
とはいえ、中には2年以上転移がなく元気に過ごせている子もいるため、積極的な治療が望まれます。
血管肉腫は非常に悪性度の高いがんで、概してその発見が遅れる傾向にあるため、定期的な健診をおすすめいたします。